2015年5月10日日曜日

父を見る



私の父は絵を描いている。

父とは性格が似ていてぶつかってばかりいた。
父の話は聞く気が無かったし、聞いて来なかった。
父のしてくれた事は、あまり覚えていない。
父にあまり興味が無かった。

10年ほど前に教員を自ら退職した父は、
家に籠って絵を描いたり、本を読んだりするようになった。
2006年、父は詩を書く事に熱中し、
四冊の自費出版詩集をつくった。
教え子への恋の詩が多く、
私は半分馬鹿にしていた。

その父の絵や詩を、ふと思い立って、
親しい友人に見せる事が何度かあった。
最近この父の絵や詩が、私の周りでやたらと人気がある。
そんなものかと思ったし、みんな何を見ているんだろうと思った。
今まで近過ぎて見えなかったものが、
他人の視点というものが加わる事で、少し見え方が変って来ている。
一人の人間として見えて来ている。

この周りでの反応や、感想を父に伝える事で、
父からぽつぽつと原稿が届く様になった。
詩に加えて、私小説も届いた。

父を見始めている。

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