2017年5月19日金曜日

無職日記 9



だんだん無職を脱しつつある。

今週から大学での彫塑の授業の頭部モデルバイトというものへ通っている。十年前くらいに縁あってアルバイトをして、思う所があり会社に通い、辞めては戻り、また会社へ行き、辞めては戻りを繰り返していて、また一年ぶりに戻って来た。この授業では女性の頭部モデルが8人くらい集合し、それぞれ決められたモデル台の上へ座り、一人のモデルを10人くらいの学生が囲んで観察しながら粘土で頭部の形をつくり、その後石膏どりをして最終的に石膏の頭像をつくり上げる。午前中3時間の授業を週6日、これが約1ヶ月くらい続く。

3時間の間、モデルは20分じっと座って10分休憩する事を繰り返す。特に大変な事はないがだんだん腰が痛くなって来る事と、眠くなる事、寒い日もあったり、あとは顔の一部に時々強烈な痒みを感じたりする事があって、そうなると手も足も出ず、痒みがぴりぴりと移動したり、少しずつひいて行く感覚を観察しながらやり過ごす事になるが、何か虫がとまっているとかそんな事はまずない。午前中は建物の東側の光が強く、まぶしくて目を開いているのが大変になって来て眠気に襲われると、意識的に深呼吸をする。肺の中にたまった息を吐いて吐いて吐いて、これは思った以上に吐けるのだが、そうやって吐ききったら少し息を止め、また吸う。吸って吸って吸ってこれでもかというくらい目一杯吸ったとき、ちょっと意識が戻る瞬間がある。

学生はまだ始めてから四日ほどしか経っていないのにもう頭と同じ大きさくらいの粘土のかたまりをつくりあげていて、ぼんやりと目や鼻や髪の形が出てきているものもある。大体この授業では、中盤にさしかかるともう手を入れる所がないと判断した学生達がだれ始め、そのタイミングで先生達が形が見えていない所、大きく違っている所、もしくはもっと細かい形があるというような事を伝え、学生達はまた作業に戻って行く。
一つの形をよく見る事に1ヶ月を費やす。久しぶりに戻ってみると、なかなかいい時間だなあと思い、それから、本当はそれくらい物事はゆっくり進んで行くんじゃないかという事について、改めて思い巡らせている。


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